friends

2018年4月23日 (月)

馬のバルーンと曇り空

旅先に届く訃報は、ことさら悲しい。
お別れにもいけない。葬儀に参列できないことと、故人との思い出や繋がりは無関係かもしれない。しかしお別れできないと、ほんとうに死が実感できないときもある。
ある友人があるとき、「ねえさんは、ちゃんと死に顔拝んできな」と私に言ったことがあったが、それはそういう意味だったんだなあと思う。

悲しみは、それを理解してくれる相手がいたり、甘えられる相手がいるときに、わいてくるときもあるけれど、ひとりにならないと実感できないときもある。
だから、旅の空で受け取った訃報は、ずっと宙ぶらりんのままであり、何日も経って、シャモニー中央駅でひとりになったときに、やっとこみあげてきた。
 
そんなとき、お母さんに手を引かれた小さな女の子が、もう一方の手に馬のバルーンの紐を硬く握りしめて、待合室にやってきた。大人っぽい顔立ちで、しっかりとした目線の子だった。
「可愛いバルーンだね、写真を撮らせて」というと、うなづいた。幼子が母国語のフランス語ではなく英語を解したのかわからないけれど。
バルーンをみて、この馬に乗っていけば、亡くなった彼女に会いに行けるのかなあと思った。
そしてその馬は、国境の駅まで、私と同じ電車に乗ってきてくれた。
 
そんな彼女から託されていた山行が、来月にある。
今日は下見に行ってきた。晴れてくれるかなあと思っていたけれど、いまにも雨粒が零れ落ちてきそうな曇り空。それでいて、最後まで降られることはなかった。
本番では、ちゃんと晴れてください。
Fbp4070334
 
Fbp4230019

2018年2月10日 (土)

胸の奥に沁みる味

白馬でスキーを終えたあと、小谷村へ行った。
まずは友人達と、あるレストランへ。ひょんな流れで、「今日の昼はここで食べよう」という話になったのだが、その思いがけない出会いに、びっくりした。
とても美味しい。そしてシェフが着ていた、シェフコートに山並みが刺繍されていたので、尋ねてみたところ、岳人たちとの交遊がたくさんあることを知った。シェフの話に登場する方々は、山と文学、山とツアースキー、山と写真、山と釣りなどの趣味をもっている方々で、私も旧知の方もいらっしゃれば、お名前だけ存じ上げている大先輩たちも。
 
世界各地で修行したあと、故郷小谷でレストランを営もうと戻ってきた、と。
そして、北アルプスの山麓で、料理を通じて、地元に貢献しようと努めていらっしゃった。
あっさりしたフレンチは普段使い、毎日でも食べたい味であり、美味しいというだけでなく、それ以上に胸の奥底に沁みた。
 
その後、友人達と別れ、さおちゃんの家に向かった。初めて訪ねる彼女の家は、とっても大きな古い日本家屋で、道路から玄関まで背丈以上の雪が積もり、ラッセルしないとたどり着けなかった。こんな大きな家に、ひとりで住んでいる女性を、私は知らない。
 
彼女を知る誰もが、「さおの料理が食べたい」「さおの料理は旨い」と口々に言う。
 
そんな彼女が、料理を作って待っていてくれた。
南瓜のスープと、マフィンを使ったピザ、そしてキャベツと人参のサラダだ。
どれも、ものすごく美味しい。ピザには胡桃が入っていた。サラダになんとなく「和風」の風味があると思い聞いてみると、塩麹を混ぜたという。
 
職業柄、予算内でスーパーで売っている食材を買い求め、大人数に向けて、手際よく作ることに慣れている。とはいえ、彼女の作るご飯は、なんでこんなに美味しく、胸の奥底まで沁みるのだろう……といつも、思う。
食べてくれる人が、その日にどんなことをしたか(身体をたくさん動かしたとか、机上でアタマを使ったとか)を考えながら作る、とも言っていた。
 
翌朝、友人宅にて。「スミちゃんが好きな朝ご飯だと思うよー」と出してくれたのは、味噌汁とお握りと漬け物だった。
 
味噌汁は、鰹と昆布で出汁をとり、シンプルな構造の味の赤味噌。三つ葉とオホーツク産だという素干しの海苔。なんと表現していよいか、その言葉を持ち合わせていないけれど、ものすごく美味しかった。
友人は「いただきものの赤味噌がいい仕事をしてくれただけ」と言うが、それだけではない。
 
そしてまた、塩味だけのお握りが、ふわっとしていて、なんとも美味しいのだ。
だいたい、お握りを軽やかに握る姿をみたときから、これは美味しいにちがいないって思っていた。
 
私が、あんまりに「美味しい、美味しい」を連呼するから、笑っていた。
笑われたけれど、それは本当で、美味しいだけでなく、この朝ご飯と、朝ご飯を作ってくれた彼女と、彼女と過ごしたいろんな時間に感謝したくなるような、胸の奥底まで染み入っていく味なのだ。
 
料理上手とか、ただ美味しいとかというのとは違う味が、彼らの料理にはある。
食べるとほんとうに、「ああ、美味しい」と思わず言葉がもれ、そしてしみじみと心が温かくなる、そんな料理。
さおちゃんがお土産にもたせてくれた蒸しパンは、その晩、みんなでワインを飲んだときに食べた。干し柿は、まだ残っているので来週の山に持っていこうと思う。
Fb_dsc0066

2018年1月 6日 (土)

チェアリフト

2本目の長いチェアリフトに乗り換えたとき、隣で友人が、「で、なにがあったの?」と。
確かに、支柱は24本。ちっとも高速ではない。時間はある。しかしこんなところで、こんなこみいった話をすることになるとは。
けれど、大人だったらみな、仕事があって、子育てや介護や家庭の事情があって、時間なんてそうない。今日も、いろんな用事を片付けて、昼まで一緒に滑ろうっていう約束だ。
そうなれば、親しい友人とどこでどんな話をしようと、アリ。
涙でゴーグルが曇っても、1本滑ればまた、乾く。

投宿先からゴンパまでのランニング。1週間毎朝、行きは走ったけれど、帰りは泣きべそかきながら色んな話。
八方のチェアリフトとカトマンズの早朝の道、これは忘れられない道のりだわ。
Fb_dsc0248

宮本輝二題

友人宅にて、宮本輝の話。あの小説がいいね、あの作品がきっかけだったなど。

宮本輝は、父親に「哀しい別れというものを味わったたことのない人間とは、おつきあいしたくない」と言われたと、彼が編んだアンソロジー『別れの船』に書いていた。しかも、中学生の頃に言われるというのだから、どんな父親だったのか。
恩師には、「50を越えた人間の情熱しか信じない」と言われたと書いていた。
宮本輝の周囲には、とんでもない大人ばかりいたのか。そういう時代だったのか。
いずれの言葉も、歳を重ねるごとに突き刺さるね、と同い年のその友人と話した。
 
そんななか、若い友人から届いた連絡は、生まれたばかりの赤子を父親が抱いている写真数枚と、元気な声。
年月重ね、古びて熟していく命もあれば、生まれたての命もあり。
 
この猫とは、どこで遊んだんだったっけかなあと、ちょっと考え込んだが、年末にもうひとりの友人のところだったと、思い出した。
01f1eb9d719bb0b1684e272a81b7c662b64
 
2018年4月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

Information

  • ✾登山ガイドについて✾
    現在、MJリンクのサポーターやテントむし山旅プロジェクトbyAdventureDivasのガイドなどで活動しておりますが、このほかに個人ガイドをご希望の方は、下記「メール送信」をクリックの上、お問い合わせください。内容など、ご相談の上、実施したいと思います。

Magazines