迷うことなく、カウンターに座る店が、3軒ある。
ひとつは、幼馴染が握る寿司屋。カウンターは5席ぐらいか。
そこがいっぱいになるようなタイミングでは行かないので、まちがなく座れる。
寿司を食べに行くというよりも、幼馴染が握る寿司を食べに行くのであって、だからカウンターに座らないと、話にならない。そして、もちろん美味しい。
友人の珈琲とクラフトビールを出すという、店もそうだ。
「なんで、珈琲とクラフトビールなの?」と尋ねると、「両方も好きだからさ」と。
もうひとつは、観光地でもある山の麓の村で友人夫妻が営む、珈琲専門店。
ひとりで寄ることが多いが、静かにコーヒーを味わうにも、窓の向こうの山並みをぼっと眺めるにも、友人夫妻とお喋りするにも、心が鎮まる。
時には、偶然に友人に会えたり、私のクルマが停まっているのを見つけて「今から寄るよ」とメッセージ入れてくれる友人もいたりする。
こちらも、なるべく混んでいるときは行かないようにするが、行楽日和であっても、休日の谷間とか、休日最終日の夕方などは静まってくる。
朝、カウンターに座った。次の行先を知っている友人は、「時間、あるでしょ。ゆっくりしていってよ」と。
友人の思いやりに甘え、コーヒーを飲みながら、次のインタビューについてじっくり考えてみた。
ほかにもお客様が数組いたし、夫婦たちは時おり話しかけてくるし、けっして静かというわけでもない。けれど、落ち着く。インタビュー当日までに、すべきこと、読みたい資料、観ておきたい映像をリストアップし、インタビューの方向性を探った。
こんな風に思考を巡らせることができる落ち着いた空気は、やっぱり店主たちが作りだしているのだろう。
カウンターというのは、店主との距離感も面白いが、臨席の方との距離感も独特だ。
先月入った、立ち飲みのカウンターでもそうだった。
ときどき通る四つ角に、品ぞろえのよい酒屋があることは知っていた。その酒屋が経営する酒場が一階と二階にある。二階は、友人と入ったことがあるが、一階の立ち飲みはいまだなく。
仕事を終えて、帰宅する前に、一杯飲んで、夕ご飯も済ませちゃおうと思い立ち、ひとりで入った。
読みたい文庫本があり、それを片手に、ハッピーアワーのワインとぬか漬けからスタート。
隣にやってきた年かさが少し上の男性は、ハッピーアワーのワインにモズクから始まった。
なんとなく、並びの人たちが頼むものが耳に入り、彼らの会話も耳に入り、なんとなく距離が縮まる。というよりも、縮まった気になる。
けれど、私はとくに話しかけたり、話しかけられたりもせず、文庫本を読みながら、飲んで、食べて。横に目をやったりもしない。
でも、隣の人たちの飲みっぷりあっての、空間。
そんな客同士の距離感も、カウンターの面白さかもしれない。
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