« 2018年3月 | トップページ | 2018年5月 »

2018年4月

2018年4月30日 (月)

山を下りてから

春はとくに、山を下りてからが忙しい。
雪の山を滑っても、里山をハイキングしても、下山後帰宅してから、もうひと仕事ある。
スキーブーツを脱いで、春の陽光のもとでサンダルになって、ふわあと開放的になるけれど、台所での作業を考えると、あんまりゆっくりもできない、ときもある。

わらび、たけのこ、山椒、こごみ、うど、ふきのとう、ふき……大好きなこしあぶらの収穫が、全体のなかで少な目なのが、残念。それは行き先に理由があるのだけれど、豚肉に挟んでとんかつにしたとか、さっと湯がいた、ナムルにした、新じゃがに和えた、など私がやったことのないレシピを聞かされると、興味がわいてくる。こしあぶらは、てんぷらか炒めるか、炒飯の具にするかぐらいしか、レパートリーがなかった。試してみたいけれど、手元にない。

行者にんにくは、去年、優秀なクライマーから醤油漬けを大量にいただいたことがあった。
使い勝手がよく長持ちする。醤油も調味料として活用し甲斐がある。
やっぱり、これがいちばんだよな。
今年も醤油漬けに。

Fb_dsc0202

2018年4月28日 (土)

手紙

旅の終わりに、グリンデルに立ち寄ったのは、13年前のひと夏下宿させてもらったネビカー夫妻と、その娘のマルガリータや孫にあたるサラ達に会うためだった。

ある日、グリンデルの目抜き通りにあるカフェで、マルガリータとサラとコーヒーを飲んでいるとき、サラが、「facebookは情報が多すぎて、やっていない。それよりも、手紙を書くようにしている。相手のことを考えながらカードを選んで、切手を選んで、ポストに投函するのも楽しい」と言った。
 
facebookのある種の鬱陶しさは、誰もが感じたことがあるのではないかと思う。
名前の通り、顔を突き合わせるような、友人にちょっと顔を見せるためのツールだったらよかったけれど、「友達」がだんだんと増えてくると、気を遣うことも増えてくる。
設定によっては、親しい限った友人にだけ向けてやれることもできるが、その「親しい友人」とやらいう設定から、誰であれ、いきなり外されたときは、やっぱり心が傷つく。
ようは、そういうところも、面倒だ。
 
サラも、弟のラファエロも、小さなときからよく手紙を書いていた。
あの夏、山から下りてきて、下宿先に帰ると、ベッドの枕元に、サラとラファエロからの手紙が置いてあった。当時はふたりともまだ、英語を話さない小さな子だったので、彼らとの会話はもっぱらドイツ語だった。短い手紙も、ドイツ語。「昨晩の美味しいご飯、ありがとう。また遊びに来るね」、そんな内容だったと思う。絵も描いてあって、ほんとうに嬉しかった。
 
週末、お世話になった友人家族がある。
彼らの新しい引っ越し先を訪ねたのだが、美味しいものをたくさん食べさせてもらい、最後には手土産もたくさんもたされて、帰ってきた。
帰宅後に、もう一度お礼の言葉を伝えようとしたとき、ハタと気づいた。
知っているのは、引っ越す前の電話番号だけ。メールアドレス、どこかにあるだろうけれど、どこだったか。facebook、知らない。住所ならば、わかる。
 
それならば、家にあるカードから、彼らに向けたいものを探し出し、切手を貼って、投函。
さて、次は、サラが夫と暮らしているという新しい家に、手紙を書こう。
Fb_dsc0201

2018年4月26日 (木)

写真機

ある晩、グリンデルにいる日本人達が集まった。
私が、13年ぶりにグリンデルヴァルドを訪ねたということで、長年グリンデルに住む上西さんが、色んな方々に声をかけてくれた。かつてご一緒した方もいれば、初対面の方も。
 
13年前のひと夏、私が暮らしたのは、グリンデルのひとつ下の村のグルンドだった。
ひと夏滞在したけれど、毎日山に登るか、山を歩くか、それ以外の日は下宿先のお父さんのチーズ小屋へ通っていたし、私が生涯唯一、「主婦業」らしきことをしていたときでもあり、めったにグリンデルの街にあがっていくことはなかった。
街へ行くとしたら、当時モンベルの店長をしていた由美を訪ねるか、コープに買い物に行くときだけ。日々の買い物はグルンドの小さなスーパーで充分だった。
だから、グリンデル住む日本人の方々とは、ほとんど交流がなかった。
 
それであっても、「たまにはグリンデルに遊びにおいでよ」「いつでも帰っておいでよ」と言ってくれる方々が、集まってくれた。
そのうえ、グリンデルに取材に来ているというスキー雑誌の編集者や写真家もご一緒できた。
 
「どんなカメラを使っているの?」と聞かれ、2台見せたけれど、そのうちのひとつは、ちっとも面白いと思えず、好きになれず、けれど山を歩きながらも、どんな天候でも手軽に撮れるから使い続けていた。
以前もそんな話を、ある写真家さんにしたところ、「これは、いいカメラですよ」と言うものだから、そんなに魅力があるのかなあ、と思い探りながら、また使い続けた。
 
「面白いと思えないカメラは、面白くないよね」と、グリンデルの写真家さん。
そのうえ手にとって、のぞき込むと、「随分、レンズがやられているんじゃない」と。
日本からやってきた、もうひとりの写真家さんが手にとり、のぞき込んでくれた。
そして、無言でパンツのポケットから布を出し、レンズを丁寧に拭いてくれた。
「これで、随分よくなったと思いますよ」と。
 
あんまりに恥ずかしかった。
取材後、夜半、コチラの飲み会に顔を出してくれ、カメラを持ってきた様子もないのに、ポケットにはレンズを拭く布切れが。
一方でハンカチの1枚もポケットに入っていない私。
 
もう少し使ってみるかなあと、その面白くなれないカメラで何枚か、テーブルの上のグラスを撮ってみた。
それでもあんまり好きになれずにいたら、こんなカメラはどお、と幾つか教えてくれた。
楽しいと思えるカメラで、やっぱり撮ってみたい。
一眼レフについているレンズが、大好きなように。
Fbp4090471_2
Fbp4090466
Fbp4090478

山岳ガイドさんとご一緒して

いま作っている本のなかに、山岳ガイドに登場いただくページがある。
行き先は、里山。里山だけれど、登攀もなにもかもガイドできるライセンスをお持ちの方にお願いした。

登山ガイド、山岳ガイド、国際山岳ガイドなどのカテゴリがあるけれど、それとは関係なく、この本を作るにあたって信頼できる方を考えたときに、最初に浮かんだのが彼だった。
そのことを編集者に話すと、私がフランスにいる間に、彼女は初対面の彼に交渉し、打ち合わせをし、取材の日まで取り決めておいてくれた。
 
ワンボックスに乗って、ロケ先の里山に向かうなか、ガイドの彼が面白いことを言った。
「ヨットって、やってみたいんですよね。だって、海を知らないと、70%のところへ行けないってしょう」と。地球上の70%が海、そう考えると、山で遊んでいる私たちは、ほんのちっぽけな範囲しか知らないのかもしれない。
そんな面白さが、彼にある。なんだか、嬉しかった。
 
自由で寛容で、それでいて厳格に真っ向に山から取り組んできた彼の人生が、小さな1日に表れている、というと大げさかもしれない。けれど、そんな彼の人柄がにじみ出るガイディングだった。

ガイドというのは、結局はそういうことなのかもしれない。
顧客の安全を確保する、そんなことは当たり前であって、登った時間が、豊かなものとなり、そこには、そのガイドの人柄や生き様が表れている。

いまにも雨が零れ落ちそうな空だったけれど、山頂に着いたころには、薄日が差し、春の花々を楽しんだ、いい日だった
 
Fb_dsc0072
 
Fb_dsc0088
 

2018年4月23日 (月)

馬のバルーンと曇り空

旅先に届く訃報は、ことさら悲しい。
お別れにもいけない。葬儀に参列できないことと、故人との思い出や繋がりは無関係かもしれない。しかしお別れできないと、ほんとうに死が実感できないときもある。
ある友人があるとき、「ねえさんは、ちゃんと死に顔拝んできな」と私に言ったことがあったが、それはそういう意味だったんだなあと思う。

悲しみは、それを理解してくれる相手がいたり、甘えられる相手がいるときに、わいてくるときもあるけれど、ひとりにならないと実感できないときもある。
だから、旅の空で受け取った訃報は、ずっと宙ぶらりんのままであり、何日も経って、シャモニー中央駅でひとりになったときに、やっとこみあげてきた。
 
そんなとき、お母さんに手を引かれた小さな女の子が、もう一方の手に馬のバルーンの紐を硬く握りしめて、待合室にやってきた。大人っぽい顔立ちで、しっかりとした目線の子だった。
「可愛いバルーンだね、写真を撮らせて」というと、うなづいた。幼子が母国語のフランス語ではなく英語を解したのかわからないけれど。
バルーンをみて、この馬に乗っていけば、亡くなった彼女に会いに行けるのかなあと思った。
そしてその馬は、国境の駅まで、私と同じ電車に乗ってきてくれた。
 
そんな彼女から託されていた山行が、来月にある。
今日は下見に行ってきた。晴れてくれるかなあと思っていたけれど、いまにも雨粒が零れ落ちてきそうな曇り空。それでいて、最後まで降られることはなかった。
本番では、ちゃんと晴れてください。
Fbp4070334
 
Fbp4230019

2018年4月21日 (土)

お礼参り

帰国早々、友人と向かったのは、長野と富山へお礼参り。
この冬にお世話になった、あちこちのご夫婦たちのところへ。
ホタルイカのタイミングは関係ないw、それよりも会いたい人たち、お礼言いたい人たちのところへ。


ある一点ではなく、それよりも線となって繋がっていき、お付き合いいただけることに、ただただ感謝。

Fb_dsc0177

2018年4月19日 (木)

ギアの開発

春から秋にかけての仕事の打ち合わせで、あるギアの輸入代理店へ。
仕事のお付き合いは長く、駆け出しの頃から、ことあるごとに。
 
約8年前に発想があったというギアについて、当時のベースとなったモデルを拝見し、それから海外にあるメーカー本社とのやり取りのメールや、当時の資料をみせてもらってきた。
 
ベースとなったモデルは、クライマーが1シーズン使ったもので、その使い込み方に、人となりが現れているような気すらしてくる。
それにしても、本社とのやり取りが頻繁で丁寧。
こんな風に、クライマーの考えをフィードバックし、形にしてくれるメーカーがあるのかと、驚いた。
日本の担当者もイラストを描いたり、言葉で表現したり、あれこれ工夫を重ねながら、改良してほしい点を示したり、また使うクライマーの生い立ちやどんな志向にあるのかを、伝えている。
 
人が使うものだから、人があってこそ。
 
帰路、この会社に来たら、いつも立ち寄る文房具屋さんへ。
「おもちゃも作ったんで、遊んでいってやってくださいね」と言われ、このネコのInstagramができたことも、教えてもらった。
Fbp4180563

編集者のアタマのなか

シャモニーからグリンデルへと移動する電車のなかで。
編集者と、LINEでやり取り。

不思議なもので、陸続きの隣国だというのに、国境を越えると、色んなことが変わる。
地形も徐々に変わってきて、牧草地の上に氷河で削られた雪と岩の山々がそびえるようになってくる。
スイスは、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語が公用語となるので、車内の表示やアナウンスは、地域によって違う。けれどこれもものの見事、ドイツ語圏に入ると、ドイツ語になった。スイス・ドイツ語は、いわゆる「Hochdeutsch」とはかなりかけ離れているので、使うには苦労するけれど、それでもまったくわからないフランス語圏を抜け出すと、ホッとする。
むろん、鉄道職員も変わるし、ユーロからスイスフランになる。
 
そんな風に耳や目をあちこちに傾けながら、仕事。
 
編集者のアタマのなかというのは、面白い。
こちら書き手は、アイディアや考えをポンポン投げるのだけれど、それをどうやって誌面に落とし込むか、整理して具体化し、目に見えるようにしてくれる。いわゆるラフを引き、示してくれるのだ。
書き手でも、ラフは書くけれど、やっぱりこのあたりは編集者が本業とするところ。
任せておいた方がよいことが多い、と思う。
 
ところで、もう一題、電車の話題に戻ると。
合計5回の乗り換えを繰り返して、グリンデルにたどり着くのだが、そのすべての時に、周囲の人たちが、荷物の持ち運びを手伝ってくれた。
たしかに重たいけれど、自力で動かさなければならず、それができないわけではない。荷物が重たい分、乗り換えに多めに時間を用意したりもしていた。
けれど、背の低いアジア人が、明らかに重たそうに荷物を引いていると、手伝ってくれる。そのなかには男性も女性もいたし、いろんな人種の人たちがいた。
Fbp4080374

2018年4月13日 (金)

「女性の登山指導者にまつわること」@『登山研修』

『登山研修』(国立登山研修所)の「創立50周年特集」に、「女性の登山指導者にまつわること」を書きました。
いただいたお題は「女性登山指導者の養成に関しての展望」。力不足ゆえとても書けず、上記内容に変更しました。展望については、長年研修所の講師を務めていらっしゃる高野由美子さんがお書きになっています。

周囲の女性の登山ガイド、クライミングインストラクター、クライマー、オーシャンアスリート、そして男性のガイドの方々にも助言いただきましたが、結局のところ、当たり前のことを回りくどくしか書けませんでした。

 

原稿に書いた大学山岳部に入部したときの主将は、斉藤尚之さんという方ですが、私は尚之さんのようなフラットな先輩に出会え、とても恵まれています。

女性の登山者、指導者にとって、同性の仲間や先輩ももちろん大切ですが、同時にフラットな視線でいてくれる男性の存在は、とても心強いと思います。

そして、性別問わず、人間がつねにフラットな視線でいられるということは、じつは結構難しいことなのではないかと、最近思います。

フラットな視線はガイドにも指導者にも重要なことですが、それを保つには努力が要ります。

 また、医学的、運動生理学的面については、今後さらなる専門性が求められると思います。

文中でフランスの女性ガイドの事情について簡単に触れていますが、この春、シャモニーからグリンデルへと旅した途次、お会いした女性の山岳ガイドさんから、最近のオーストリアの女性ガイドの事情をお聞きする機会があり、とても興味深かったです。

ご協力いただいた皆さん、ありがとうございました。

 

冊子は、今後、研修所のwebサイトで読めるようになりますがまだもう少し先。

今回は……文中に書いた、オーシャンアスリート、岡崎友子さんの印象的なインタビュー「海で生きるために、私が選択してきたこと」をご紹介します。→コチラ

友子さんとのお付き合いは長くなりますが、このインタビューのある一節を読んで、今回のテーマに大きなインスピレーションをいただきました。 

30688944_10214336839068531_48591437

« 2018年3月 | トップページ | 2018年5月 »

2018年9月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

Information

  • ✾登山ガイドについて✾
    現在、MJリンクのサポーターやテントむし山旅プロジェクトbyAdventureDivasのガイドなどで活動しておりますが、このほかに個人ガイドをご希望の方は、下記「メール送信」をクリックの上、お問い合わせください。内容など、ご相談の上、実施したいと思います。

Magazines