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2018年2月10日 (土)

胸の奥に沁みる味

白馬でスキーを終えたあと、小谷村へ行った。
まずは友人達と、あるレストランへ。ひょんな流れで、「今日の昼はここで食べよう」という話になったのだが、その思いがけない出会いに、びっくりした。
とても美味しい。そしてシェフが着ていた、シェフコートに山並みが刺繍されていたので、尋ねてみたところ、岳人たちとの交遊がたくさんあることを知った。シェフの話に登場する方々は、山と文学、山とツアースキー、山と写真、山と釣りなどの趣味をもっている方々で、私も旧知の方もいらっしゃれば、お名前だけ存じ上げている大先輩たちも。
 
世界各地で修行したあと、故郷小谷でレストランを営もうと戻ってきた、と。
そして、北アルプスの山麓で、料理を通じて、地元に貢献しようと努めていらっしゃった。
あっさりしたフレンチは普段使い、毎日でも食べたい味であり、美味しいというだけでなく、それ以上に胸の奥底に沁みた。
 
その後、友人達と別れ、さおちゃんの家に向かった。初めて訪ねる彼女の家は、とっても大きな古い日本家屋で、道路から玄関まで背丈以上の雪が積もり、ラッセルしないとたどり着けなかった。こんな大きな家に、ひとりで住んでいる女性を、私は知らない。
 
彼女を知る誰もが、「さおの料理が食べたい」「さおの料理は旨い」と口々に言う。
 
そんな彼女が、料理を作って待っていてくれた。
南瓜のスープと、マフィンを使ったピザ、そしてキャベツと人参のサラダだ。
どれも、ものすごく美味しい。ピザには胡桃が入っていた。サラダになんとなく「和風」の風味があると思い聞いてみると、塩麹を混ぜたという。
 
職業柄、予算内でスーパーで売っている食材を買い求め、大人数に向けて、手際よく作ることに慣れている。とはいえ、彼女の作るご飯は、なんでこんなに美味しく、胸の奥底まで沁みるのだろう……といつも、思う。
食べてくれる人が、その日にどんなことをしたか(身体をたくさん動かしたとか、机上でアタマを使ったとか)を考えながら作る、とも言っていた。
 
翌朝、友人宅にて。「スミちゃんが好きな朝ご飯だと思うよー」と出してくれたのは、味噌汁とお握りと漬け物だった。
 
味噌汁は、鰹と昆布で出汁をとり、シンプルな構造の味の赤味噌。三つ葉とオホーツク産だという素干しの海苔。なんと表現していよいか、その言葉を持ち合わせていないけれど、ものすごく美味しかった。
友人は「いただきものの赤味噌がいい仕事をしてくれただけ」と言うが、それだけではない。
 
そしてまた、塩味だけのお握りが、ふわっとしていて、なんとも美味しいのだ。
だいたい、お握りを軽やかに握る姿をみたときから、これは美味しいにちがいないって思っていた。
 
私が、あんまりに「美味しい、美味しい」を連呼するから、笑っていた。
笑われたけれど、それは本当で、美味しいだけでなく、この朝ご飯と、朝ご飯を作ってくれた彼女と、彼女と過ごしたいろんな時間に感謝したくなるような、胸の奥底まで染み入っていく味なのだ。
 
料理上手とか、ただ美味しいとかというのとは違う味が、彼らの料理にはある。
食べるとほんとうに、「ああ、美味しい」と思わず言葉がもれ、そしてしみじみと心が温かくなる、そんな料理。
さおちゃんがお土産にもたせてくれた蒸しパンは、その晩、みんなでワインを飲んだときに食べた。干し柿は、まだ残っているので来週の山に持っていこうと思う。
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