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2018年1月14日 (日)

クマのタマ

12月アタマだったか、夜10時を過ぎて、渋谷駅のプラットホームを歩いていると、携帯が鳴った。叔父からだ。こんな時間になにがあったのかと心配になり、雑踏のなかであったが出てみた。
すると、いつもの間延びしたような声で(いろんな叔父がいるが、彼はちょっとトボケたユーモアの持ち主)、「澄子ちゃん、明日はまだ暖かいようだね。けれど明後日から冬がやってくるようだよ。寒くなると、叔父ちゃんも外に出るのがたいへんだからね、明日お母さん(私の母)のお見舞いに行こうと思うよ」と。
 
言葉に窮した。
80を過ぎて、自分の体調管理だって大変だろう叔父が、電車に乗って母の見舞いに来てくれる。叔父の家と最寄り駅まで10分、電車が小一時間、こちらは電車を降りた後にバスと歩きが待っている。けっして近くない。
しかもそのために、気候を見計らってくれていたのだ。昨日今日考えたことでもなく、ずっと叔父は母のことを気にしてくれていた。
叔父の家の隣には、彼の兄、つまり母の兄家族も住んでいる。こちらは90歳近い。
それでも、時折、電車に乗って母に会いに来てくれる。
兄、母、弟と3人きょうだい。ひとりの女きょうだいの身を、心底心配してくれているよう。
以前、足元悪いところ来てくれることを申し訳なく思っているというようなことを、兄である叔父に話したところ、「妹のことなんだから、当然だ」と言っていた。
 
今回の叔父の電話には、返す言葉が見つからないあまり思わず、「叔父ちゃん、私はね、仕事柄でもあるけれど、毎日天気図や天気予報を何度も見ているんだよ。その通りだよ。明日はまだ暖かいけれど、明後日から寒くなるよ。だから、お大事にしてね」と素っ頓狂なことを返してしまった。
 
年が明けて、母の部屋から、弟である叔父に電話をした。
年末の母の誕生日に着信があったけれど、私が出られなかったからだ。
異国に住む従妹が帰国していて、彼女の明るい声が電話口に響いた。
叔父に代わってもらうと、こんどは、母の病気によいだろう療法をテレビでやっていたと話し始めた。それについて書かれている本もあるから、探してみてと。
 
先日、正月休みを終えて帰国した従妹から、今度はLINEが。
父親が頓珍漢なコトを言ったかもしれないけれど、気にしないでね。父が誰かを心配して電話するなんて、初めて見たよと。
 
いろんなことへの理解が難しくなってきた母であるけれど、兄弟の声を聞くと嬉しそう。そんな彼女の顔を見ていると、「肉親」という言葉が浮かんでくる。まさに「血肉を共にした者同士」。肉親は、やっぱり肉親なのだと。
年老いて、それぞれがたいへんであっても、こうやって思ってもらえるのはありがたいことだと、しみじみし。そして、兄弟姉妹の愛情というのは、そんなにも強いものなのかと、兄弟姉妹を知らない私は、羨ましくも思ったり。
 
母の部屋を出る前に、枕元のタマを手にとり、「相変わらず、首が座っていないというか首がちぎれそうだわ。タマはクマなのに、なんでタマと名付けたんだろう、私は」と思っていると。
「タマをもっていかないでよ」と。幼少の頃、ずっと私が抱いていたぬいぐるみは、いまは母の枕元に。
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