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2017年11月 2日 (木)

「彼女の文章が好きなんだよ」

晴れ渡る八ヶ岳山麓、もう少し居残ろうかと思ったが、お世話になった山岳写真家である高橋良行さんの訃報を聞き、朝ごはん後、東京に向けてクルマを走らせた。
 
同じく山岳写真家の渡辺幸雄さんが、通夜に参列するために北穂高岳から下りてくるという。
そうであれば、私も通夜へ行こうと予定したのだが、どうにも疲れがたまってダウンしてしまった。せっかく間に合う時間に、東京に戻ったのに。
通夜後、ナベさんが連絡をくれ、良行さんと一緒に進めていた仕事の話や、彼が残した宿題について話してくれた。まったく気持ちの整理もつかない、別れもさんざん、ぐちゃぐちゃだったというようなことを言っていた。
ベッドから起き上がるのも辛かったけれど、そんなだったら体に鞭打ってでも通夜に参列すべきだったと悔いた。
かつて、磯貝さんが滑落死したとき、磯貝さんへのお別れだけでなく、周囲にいる足立さんやナベさんを支えたいと思って、通夜に駆け付けたことを思い出した。葬儀って、生き残った人たちのためでもある。
 
良行さんと仕事を一緒にしたことはなかった。けれど、山岳写真家集団の展覧会に行くと、いつも会場にいらっしゃったので、自然と話をするようになった。
ここ数年はお会いする機会を逸していたが、あるとき、「キミは柏さんの旦那さんなんでしょう。僕は彼女の文章が大好きなんだ」と、当時夫が話しかけられたと、帰宅し報告してくれた。そんな会話は、翌年もまたその翌年も続いた。
 
「君の文章が好きだ」。そういうことを面と向かって言ってもらえたら、それだけでライター冥利に尽きる。そんな経験は少ないが、でも数の多さではないかもしれない。たとえひとりであろうと、言ってもらえただけで、幸せであり、心の支えとなる。
 
小春日和、心の支えであったひとりの先輩とお別れ。

 
追記*
こんなことを書いた矢先、ある雑誌の文章を読んで、「柏さんの文章、好きです」というメッセージが先ほど届いた。私もこれから、本人に向かって、「あなたの写真が好きです」「あなたの文章が好きです」ってちゃんと言おうと思った。
  
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