« 山の仲間-その2 | トップページ | 長崎県勤労者山岳連盟50周年 »

2017年10月16日 (月)

山の仲間ーその3/黄葉の森

先日、山小屋の手伝いをしているとき、ひょんなことから女性二人組と話をした。
大きな荷物だったので、テント泊かなと思い、「テント場の受付をされますか?」と尋ねると、「上の岩小屋で寝るんで」と。なるほど。
そこからもう少しだけお喋りは続き、赤蜘蛛に登るということと、どこの県から来たかということまで(話の流れのなかでなぜか……)聞いた。
「明日ココに下りてきたときに、元気にジュースを飲めるぐらいでいたいなって思います」と笑いながら、登っていった。
ふたりが「桃のネクター」がどうのこうのって話しているも小耳に挟んだので、翌日はぜったいにネクター缶とジュース数種類は、冷やしておこうと、切れないようにって、気を付けていた。
 
翌日の昼ごろ、勝手口近くで仕事をしていたら、ふたりが通りかかった。思わず、「お帰りなさい」と笑顔で手を振ったら、「登れなかったんです」と。ああ、今日は青空ではあったが、風が強かったからなにかたいへんだったのかもしれないと思うと、本人たちの理由だったようだ。
それでも笑顔であり、登りの時の楽しそうな声と相まって、仲のよい山仲間が、自分たちの実力を出し切らなければならないルートにやってきて、ちょっとしたなにかが理由で登れなかったけれど、それでもいい時間を過ごしたのだろう、きっとまた登りに来るのだろうなって想像した。勝手な想像だけれど、結果がどうであれ、自分たちで積み重ねてきたとういう登山こそが満たされるのだろうと。
 
小屋の前で一休みしたあと彼女たちは下山していった。その30分後ぐらいに私も下山を開始した。登山道上にクマが出たという誤報(とあとで知る)があったため、ひとりで下るのは気が引けており(ちょっと前に、早月尾根でクマと至近距離で会ったばかりだったし)、なんとか彼女たちに追いつけないかなあと少し思っていた。けれど足並みそろった二人に追いつくのは難しいだろうと諦めてもいた。
ところが、あっけなく追いついた。小屋から30分も下らないうちに、屏風岩の鞍部で休んでいたのだ。変わらず、ふたりでお喋りしている様子が、仲睦まじくほほえましかった。
 
下山後、駐車場にある「おじろ」のおばちゃんのところへ行くと、いつものようにそこに集う人たちとお喋りが始まった。
おばちゃんが、昨日からあるクルマの室内灯が付いていて、バッテリが上がってしまっているのではないかと話し始めた。すると、そこにいた人たちの中にはクルマに詳しい人達もいて、該当するクルマがどの程度のバッテリィを積んでいるかも想像ができ、これは動かない可能性が高い、と口をそろえて言い出した。
ナンバーを聞いて、それは赤蜘蛛の女性二人組のクルマに違いないと、私は思った。
平日で停車台数も少ないから、だいたいの見当がつく。まずまちがいない。
 
あの、笑顔のふたりのことを思うと、心配になった。あんまりに楽しそうに見えたから、途中でビバークでもして、もう1泊この山を楽しむ気ではなだろうか、とすら思った。
おばちゃん達に二人の話をすると、みなも心配し始めた。
きっと笑いながら下りてくるだろうに……クルマが動かないなんてことがあったら。
さいわい、ブースターケーブルを持っている人がいたので、下山を待っていよういうことになった。私が下りてきたのが16時前。その話をしたときは既に17時を回っており、いまからJAFを呼んでも暗くなってしまうだろうから、と。おばちゃんも、「おじろ」の店を開けておいてくれるという。なんて優しい人たちなんだと思いながら、もちろん私も一緒に待っていることにした。
 
「おじろ」の閉店時間は過ぎていたけれど、17時半を回った頃、ふたりが下りてきた。駆け寄って、事情を話すと、慌ててキーを取り出し、エンジンをかけた。
すると無事、エンジンはかかった。ああよかった、取り越し苦労だった。
 
私が、(下山も遅かったし)「あんまり楽しそうに笑っていたから、もう一晩どこかでビバークして紅葉の山で遊んでくるつもりなんじゃないかって、思っていたんです」というと、そんなことはないと。
「まだか、まだかってブーブー言いながら下っていたんですよ」と言うのを聞いて、ハッとした。
それはそうだ。登れなかったんだから、楽しいだけのわけがない、悔しいはずだ。
あんまりに二人が毎回笑顔を向けてくれたので、私はすっかり本人たちの気持ちに思い至っていなかった。
 
楽しそうに登っていく二人を見て、やっぱり仲間との登山はいいな、登れることも登れないこともあるし、スマートにいかないことだって多々ある。けれどやっぱりいいなと思った。
そして思いがけず、ふたりの下山を待つことになり、こんなにも晴れて綺麗な秋の色に染まった黒戸尾根であるけれど、人はそれぞれ色んな思いで下山しているのだなあと、それは気持ちいいとか楽しいとかだけではないという、極々当たり前のことを思い出すことができて、よかったなあと思った。
22310140_10212845813033812_26492734

« 山の仲間-その2 | トップページ | 長崎県勤労者山岳連盟50周年 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/540701/65925224

この記事へのトラックバック一覧です: 山の仲間ーその3/黄葉の森:

« 山の仲間-その2 | トップページ | 長崎県勤労者山岳連盟50周年 »

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

Information

  • ✾登山ガイドについて✾
    現在、MJリンクのサポーターやテントむし山旅プロジェクトbyAdventureDivasのガイドなどで活動しておりますが、このほかに個人ガイドをご希望の方は、下記「メール送信」をクリックの上、お問い合わせください。内容など、ご相談の上、実施したいと思います。

Magazines