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2016年8月 4日 (木)

黒猫の看板

白馬に行くと立ち寄る喫茶店がある。いいや、「喫茶店」とはちょっと違う感覚のお店。珈琲専門店だろうか。紅茶やジンジャーエール、石窯焼きのパンやケーキもあるけれど。

おそらく、4.5年前に初めて訪ねた。仕事の合間にひとり抜け出して、ホッと息をつく場所だったりもした。
オーナー夫妻がテレマークスキーヤーであり、山もお好きなことは知っていたけれど、とくに話をすることもないまま数年が過ぎた。

どんなきっかけだったか忘れてしまったが、ある時から話をするようになると、「以前からご来店いただいていることは、わかっていたのですが、息抜きにいらっしゃっているのかなあと思い、お声をかけないでいたんですよ」と。なんとまあ、思いやりある距離の取り方。

以来、いろんな話をするようになった。カウンター席が空いていれば、そちらに座っておしゃべりに興じることも多い。窓から見える白馬の山々が美しい。
個人的な相談をしたり、いろんなことを教えてもらったり、なんてことはないお喋りをしたり、美味しい珈琲とともに、心安らぐ時間だ。
白馬村に入らなくとも、あのあたりに行ったときには、むりくり帰宅ラインを捻じ曲げてでも、寄りたくなってしまう。

先週、この夏に初めて立ち寄った。クルマを停めて店に入ろうとして、ハタと気づいた。赤いポストの上に黒猫の看板が設置されているのだが、これがいつもと逆方向を向いているのだ。その前の週に、うっかり定休日に友人と待ち合わせてしまったときは、いつもの方向を向いていたのに。
はて、これはどういうことだろう?」と、一瞬のうちにアタマのなかでクルクルと考え事をした。向田邦子の『あ・うん』には、たしか、ある人が自分の宅を訪ねてきているときに、別の知人と鉢合わせになってはいけないと、玄関に白い旗を立てておくのではなかっただろうか。それを目印に、もう一人の人は、その時の訪問を控える。


今日の店内はどんなことになっているのかと、ちょっとドキドキしながら扉を開けると、まったくいつもの通りだった。当たり前か、ここは『あ・うん』の水田家ではなく、誰もが訪れ、心安らぎ美味しい珈琲を飲む店なのだから。
それでも尋ねずにいられなかった。さっそく、カウンター越しのミツさんに、「黒猫の向きが反対なのはどうして? 向田邦子ってコト?」と聞くと、反対向きだったことはまったく知らなかったと。慌てて、確認しにいき、「ほんとだ」と戻ってきた。そして、あの人のいたずらか、この人か、、、などミツさんは思いめぐらしているようだった。
けれど、焙煎スペースからカウンターに戻ってきた恵美さんが、「あ、それならば私がやったの」と一言。これで落着した。いくつか理由もあったようだ。


翌日も珈琲を飲みに行ったが、黒猫の向きはそのまま反対方向だった。
「1週間経つけれど、反対を向いているってクチにしたのは、澄子さんだけですよ」と。

みんなは、黒猫がいつもと逆の方向を向いていても、ドキドキしないのだろうか……?

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