テープ起こし
インタビューを録音するには、いくつかの目的がある。
今回のインタビューは6時間ほどにおよび、原稿を書く際にすべてを起こす必要はないと考えていた。けれど、いざ書き始めると、構成が定まらず行ったり来たりを繰り返す。これでは先に進まないと、とうとう締め切り日を目前にして、やっとテープを起こし始めたのだ。
6時間と言えども、最初はインタビュイーの方が昼食を作ってくれながらで、そのあとふたりで食べたり、最後にはおやつに焼いてくれたお菓子も食べながらなので、みっちりという風ではない。そのためか、ざっくりしたものではあるが、8時間もかからずに起こせた。ちょっと気合入れたけれど。
インタビューをする相手は、大きな感情の揺さぶりがある場合や、なにかに直面しているときもある。当然、心のうちは整理されていない。言葉にならない思いもある。
けれどそれであっても、私はなるべく言葉を発さずにいる。
時々インタビューを受ける側になるときがあるが、「この記者は、もう自分でオチを決めてきたでしょう。記事の筋書きが出来上がっているでしょう」と感じることがあり、あれは最悪だと思っている。誘導尋問みたいなものだ。
しかし今回は、違った。わかっていたことだが、テープを聞いて、私は結構話をしているなあと再確認した。でも、誘導尋問のつもりはなく、聞かれたことに対して、自分の考えを述べているまでだ。
インタビュアーは、カウンセラーでもなければ、友達の相談に乗っているわけでもない。けれど、インタビュー中にこれほどまで自分の考えを述べたことはなかったなと、思った。
それにしても、6時間ものあいだ終始笑いの絶えないインタビューだった。テープには、私が大笑いする声が、何度も録音されている。
シリアスな場面に直面し、忸怩たる思いで山を去った。どこにも向けることのできない、着地できない心を抱えて、帰ってきた。
それであっても、話の端々には、いつもユーモアがある。そして、私はそれを聞いて、ぷって笑ってしまう。
なんでしょう、このしなやかな強さは。

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