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2015年10月10日 (土)

レトロタイルのビルに住む彼女

ちょうど9月1日から、かれこれ7.8回通ったのでは。
かなり短時間で探さざるをえなくなり、偶然見つけたところが、ここでよかった。
毎回、静脈注射には数分かかり、その間の彼女との会話がなんとも味わい深い。

自身の専門において、患者である私に接するものの、そこから出てくるエピソードやちょっとした言葉の端端に、人生のふり幅の大きさと、人間性の深さを感じる。
待合室にあったある記事を見て納得。旅好きとお見受け。

アンデスの高地民族が、低圧低酸素で暮らすなかで自然と身に付けた、ヘモグロビンを増やす食生活。たんに鉄分を多くとればよいのではなく、鉄分を吸収しやすくするために、どんな食材を選んでいるのか、という話。
「だからといって、あなたが○○ばかり食べているわけにいかないでしょう。だからこの錠剤を出しておくわね」。なんて言葉に、ものすごいかわいらしさを感じる。

またある時は、私が時々旅してきた土地について、実際にそこではどんな暮らしが展開されているのか、どのような政治であるのか質問があった。そんなこと、これほど知性と好奇心がある彼女が知らないわけがない。
けれど、おそらく旅するなかで、その土地に立ち、人々と触れ合うなかで見聞したことを聞きたいのだろうと思い、いくつかのエピソードを話した。あくまでも、それは私が聞きかじった極々小さな破片だけれど。

すると、同じような境遇にあるお隣の土地の女性たちが、どんな健康問題を抱えているか、話してくれた。そこには現代の社会のひずみや政治的問題がある。

これぞプロだと思ったのは、最初の短い会話から、私の日常生活や仕事を察し、私に合った治療方法を提案してくれたこと。そしてそれについて、「1日、自分で考えていらっしゃったら」、と時間を与えてくれたこと。
じつに合理的であり、かつ心遣いがある。
なんてこと、私よりも長く生きて、多くの経験を蓄積してきた彼女に対して、未熟なままの私が言うのは失礼なのだけれど。

こういう風に、これまでの人生で経験し培ってきたことを、温め、育て、味わいのあるものにしていける人は、ほんとうに美しいなあ、豊かだなあと思ったのだ。

登山もクライミングも、スキーもなにもかも、同じ。

次にお会いするのは、少し先になるけれど、それがとても楽しみだったりする。

 

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