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2010年10月 2日 (土)

心親みんな

早番の早川さんが発電機のスイッチを入れたとき、私も布団を片付けて、居間へ。

取材していたころは、従業員と同じ仕事をさせてもらっていた。いいや、同じなんていうのは不遜であって、ちっとも役に立っていないし、同じ質のことは何もできないのだけれど、みんなの寛容な気持ちが、私に仕事を体験させてくれていたのだ。

あの頃と、仕事の内容はほとんど変わっていない。

朝ごはんの煮物を盛り付けるのに、その直前まで煮物の鍋を載せておくヒーターも同じだ。

10年前と変わらないというのは、すごいコトだと思う。

表面的にはいろいろな変化があったけれど、根幹が変わらないことを、こうやって時を隔てて改めて実感する。

その変わらない良さが、登山者惹きつけるのだろうし、北穂高小屋の魅力なのだと思う。

ある時、主人の義秀さんと「北穂高小屋は誰のものであると考えるか」というような話をしたことがある。

北穂高小屋が、北穂高小屋に泊まった登山客全員と、従業員やアルバイトのみんな全員、北穂高小屋を通りかかった登山者全員、登ったことはなくてもいつか来てみたいと思っているみんなのものだとしたら、それを背負っている義秀さんというのは、かなりのものだ。

先代から義秀さんに引き継がれながらも彼らの揺るがない信念があり、そしてそれを支えている職人のような従業員たちがいる。

改めて、私の大好きな、そして大切な場所だと気づいた。

北穂高を誰よりもよく知っている一人である足立さんが、今日どのポイントから日が昇るかそれはそれはピンポイントで私に言い続けていた。せっかく久しぶりに来たのに、見逃すな、ということだろうか。雲のなかから日が昇るちょっと前に、幻日も現れた。

幻の太陽が、雲に映っている。

磯貝さんの命は、この世に存在しなくなってしまったけれど、なんだか北穂を見ているような気がした。

帰り際、足立さんに、「1年に一度は来るように」と言われた。ごめんなさい、ご無沙汰して。最近は通りかかるだけでした。

近しく思えば思うほど、どうしても来れない時もある。

取材で通っていた2シーズン、私はある意味、従業員の人たちと距離を保っていた。一定距離を縮めちゃいけないっていつも思っていた。

けれど、取材を終えたいま、ものすごく近しい存在になった。

小屋を出発する前に、恵美ちゃんと定点撮影(一緒に写真を撮る)し、お別れ。

松濤岩を過ぎて、再び磯貝さんの場所に来るころ、従業員のみんなが布団を屋根に干し始めていた。

南陵を下り、涸沢を過ぎて、一気に下りていく。

あとひとり逢わなければいけない人がいるからだ。ヘリサポートで下山していた義秀さんが、今日登ってくる。涸沢の下あたりで会えるだろうと話していた。

けれど、下れども下れども現れない。とうとう横尾に到着。

聞いてみると、今日は早くに上がっていったと。しまった、涸沢ですれ違ってしまった。各小屋に寄ればよかった。

ちょっと気が抜けてしまったけれど、義秀さんとは下界でも会う機会があるので、気を取り直して、そのまま徳沢へ。

北穂の山頂から上高地までノンストップで歩こうかと思っていたけれど、あまりにおなかがすいたので、徳沢で野沢菜チャーハンを食べる。

すると眠くて眠くてたまらなくなってきた頃、F山岳会の先輩たちにばったり会った。

いつもお世話になっているKさんとYさん。ひとしきり、立ち話をしてお別れ。日曜の天気を心配していたけれど、上向きの予報に変わってきていたので、たぶん大丈夫なはず!

バスまで時間があるので、明神池や穂高神社を参拝。日本アルプス遭難者慰霊碑もあったので、まとめてみんなの分を拝んだ。こんなに一遍に拝むなんて、神様も苦笑いかもしれない。

追伸*

今朝、北穂のテラスにヘルメットの3人組が来た。よく見ると、山岳ガイドの笹倉孝昭さんだった。久しぶりに会って、いろんな話をした。女性二人のお客様は、クライミングに夢中で、もう熱い熱い思いがあふれんばかりのよう。

3人が向かったのは、ドーム中央稜。

私も取材していた当時、足立さんと一緒に登った。あの時もうひとつ登りたかったドーム西壁雲表ルートは、下部が崩壊し登攀不可能になっているという。山って逃げちゃうんだな。

いつか、また滝谷を登りたい、今度は四尾根にしましょうよ。私、登ったことないんです。

101002kitahofuji 101002karasawakoyo 101002hodakajinja 101002minamo

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